愛着形成とは何か
不安なときに頼れる関係
子どもは、怖いことや困ったことがあると、身近な大人に近づいたり、泣いて助けを求めたりします。
その働きかけに大人が応じ、安心を取り戻す経験を重ねることで、愛着が育ちます。
愛着には、次の2つの役割があります。
- 不安なときの支えになる役割
- 安心して遊びや探索に向かう土台になる役割
こども家庭庁は、この関係を「安心と挑戦の循環」として説明しています。
親が子どもを愛しく感じることとの違い
親が子どもに抱く愛情と、子どもが養育者を安心して頼れる関係は、区別して理解すると整理しやすくなります。
出産直後から強い愛情を感じる人もいれば、関わる中で徐々に実感する人もいます。
英国の公的医療機関NHSも、赤ちゃんとのつながりの感じ方や築き方には個人差があると説明しています。
愛着と子どもの発達の関係
感情の調整や対人関係との関連
こども家庭庁の2025年の調査研究報告書では、愛着の安定性と、感情を調整する力や社会的な行動との間に関連があるとされています。
⚠️ ただし、研究で示される集団としての関連から、個々の子どもの将来を断定することはできません。 「愛着が安定すれば必ず友人関係が良好になる」といった説明は、研究結果を超えた断定です。
幼少期の関係だけで将来は決まらない
愛着は、乳幼児期に一度形成されたら変わらないものではありません。
親子関係の変化や、その後の人との関わりによっても変化します。
こども家庭庁の資料でも、愛着はより安定した方向に変わり得ると説明されています。
「乳幼児期を過ぎたら手遅れ」という理解は適切ではありません。
発達に応じた愛着形成の特徴
年齢は目安です。 反応が現れる時期や強さだけで、愛着の状態を判断することはできません。
生後早期から数か月
赤ちゃんは、泣く、表情を変える、声を出すといった方法で周囲に働きかけます。生後早期から、なじみのある声やにおいにも反応します。
成長に伴い、顔を見てほほ笑む、声を返すなどのやり取りが増えていきます。
米国小児科学会の保護者向け情報でも、生後3か月頃までの社会的・情緒的発達として、こうした反応が紹介されています。
この時期の関わり方
- 泣いたときに様子を確認する
- 声に応じる
- 抱いて落ち着かせる
生後6か月頃から3歳頃
養育者が離れると泣く、見慣れない人を怖がるといった反応が見られます。
NHSは、分離不安や人見知りは生後6か月頃から3歳頃によく見られる、通常の発達の一部と説明しています。
後追いや登園時の涙だけを理由に、「愛着が不安定」「親の愛情が足りない」と判断することはできません。
幼児期以降
成長すると、抱っこなどの身体的な接触に加えて、声かけや見守りでも安心を得られるようになります。
離れた場所から表情を確かめる、困ったことを言葉で伝えるなど、安心を求める方法も変化します。
年齢が上がっても、気持ちを受け止めてもらう経験は大切です。
日常でできる具体的な関わり方
子どもの働きかけに気づいて応じる
ハーバード大学の子ども発達センターは、子どもの声やしぐさに大人が応じる、往復のやり取りを紹介しています。
大人から話しかけ続けるだけでなく、子どもが何に関心を向けているかを見て、反応を待つことも含まれます。
| 子どもの様子 | 関わりの例 |
|---|---|
| 何かを指さす | 同じものを見て、名前を伝える |
| 声を出す | 声や表情を返し、その後の反応を待つ |
| 遊びを見せに来る | 手を止めて見て、子どもの言葉を聞く |
| 別のものに関心を移す | やり取りを無理に続けず、関心の変化に合わせる |
気持ちを言葉にする
こども家庭庁の研修資料では、子どもが伝えようとしていることを観察し、うまく言えない気持ちを表す言葉を一緒に探す実践が紹介されています。
声かけの例
- 転んで泣いたとき →「痛かったね」
- 別れ際に泣いたとき →「離れるのが寂しいね」
- 失敗して怒ったとき →「うまくできなくて悔しかったね」
言葉を決まり文句として使うのではなく、その場の表情や状況に合わせて応じます。
抱っこや遊びを日常に取り入れる
NHSは、抱いて慰める、遊ぶ、話す、歌う、読み聞かせるといった方法を紹介しています。
愛着を育む関わりは、抱っこだけに限られません。日々の世話や遊びも、子どもの反応に応じる機会になります。
うまく応じられなかった後に関わり直す
疲れているときなど、いつも穏やかに応じられるとは限りません。
NHSは、難しいやり取りの後にも、子どもとのつながりを取り戻そうとすることが大切だと説明しています。
強く言い過ぎた後に、落ち着いて声をかける、話を聞くなど、再び関わる機会を持つことも必要です。
忙しい家庭での関わり方
日常の中にやり取りを組み込む
着替えや食事の場面でも、子どもの表情や声に応じることはできます。遊んでいるものに目を向け、子どもの反応を待つことも、往復のやり取りになります。
⚠️ ただし、確認した公的資料には「1日数分で十分」「決まった回数の抱っこで安定する」といった一律の基準は示されていません。
短時間の関わりだけで効果を保証する説明は避ける必要があります。
養育者の負担を減らす
こども家庭庁の「はじめの100か月の育ちビジョン」は、子どもへの関わりに加えて、保護者・養育者の支援も重視しています。
自治体の子育て支援には、一時預かりなど、育児の負担を軽減するための事業があります。
利用条件や実施内容は、居住地の自治体で確認できます。
保育者との関係も愛着を支える
愛着の対象は、母親一人に限られません。子どもと継続して関わる保育者も、安心して頼れる存在になります。
こども家庭庁は、保育者が子どもの気持ちを理解して関わることと、保護者と子どもの育ちを共有することを重視しています。
家庭だけで関係を支えるのではなく、保育者も含めた身近な大人との関わりが位置づけられています。
気になる行動を「愛着の問題」と決めつけない
後追いや泣き方だけでは判断できない
後追い、人見知り、別れ際に泣くといった反応は、通常の発達でも見られます。
反応の有無や強さだけで、愛着の安定性を判定することはできません。
「愛着が不安定」と「愛着障害」は同じではない
愛着の安定性についての説明と、医学的な診断は区別が必要です。
英国NICEの診療ガイドラインでは、愛着障害の診断には診断基準を満たすことが必要とされています。また、精神的な問題や神経発達上の状態についても、適切な評価と対応を求めています。
落ち着きがない、目が合いにくい、人との距離が近いといった行動だけで、愛着障害と判断することはできません。診断には、専門家による評価が必要です。
子どもや保護者の負担が続くときの相談先
子どもの不安が強く、日常生活に支障が出ている場合は、専門家への相談が必要です。
NHSも、不安が強い、長く続く、生活に影響するといった場合に相談を勧めています。
親子のための相談LINE
こども家庭庁が案内。対象は18歳未満の子どもと、その保護者など。受付時間などは公式案内で確認できます。
こども家庭センター
市区町村が設置。子どもや子育て家庭からの相談を受け付け、関係機関や子育て支援サービスにつなぐ役割もあります。
参考文献
こども家庭庁『科学的知見の充実・普及に向けた調査研究調査研究報告書』2025年3月
URL: https://www.cfa.go.jp/assets/contents/node/basic_page/field_ref_resources/55e89c07-ffc5-40a9-bad7-ce6c6dd11b8a/a610642f/20250421_policies_kodomo_sodachi_research_03.pdf
こども家庭庁『「はじめの100か月」の「アタッチメント」と「遊びと体験」』
URL: https://www.cfa.go.jp/assets/contents/node/basic_page/field_ref_resources/55e89c07-ffc5-40a9-bad7-ce6c6dd11b8a/ca3ffa9b/20250421_policies_kodomo_sodachi_research_04.pdf
こども家庭庁『はじめの100か月の育ちビジョン 専門職の方に向けた研修ガイドブック』
URL: https://www.cfa.go.jp/assets/contents/node/basic_page/field_ref_resources/285e4915-7107-4fe2-8a75b5a354685cc9/6fa7ef5f/20240404_policies_kodomo_sodachi_semmonshokumuke_02.pdf
こども家庭庁「こども家庭センター」
URL: https://www.cfa.go.jp/policies/kokasen
こども家庭庁「親子のための相談LINE」
URL: https://kodomoshien.cfa.go.jp/no-gyakutai/oyako-line/
免責事項
本記事は一般的な情報提供を目的として作成したものであり、医師、心理職、その他専門家による診断、治療、助言を代替するものではない。
記載内容は信頼できる資料に基づき整理しているが、正確性や完全性を保証するものではない。
内容は予告なく変更される場合がある。
子どもの発達や家庭環境、個別の状況により適切な対応は異なる。本記事の情報がすべてのケースに当てはまることは保証しない。
本記事の内容を利用したことにより生じたいかなる結果についても、一切の責任を負わない。
子どもの心身の状態に不安がある場合、または対応が困難と判断される場合は、医療機関(小児科、児童精神科、心療内科)や公的相談機関に相談する必要がある。





