寝ても疲れが取れないときは、睡眠不足や睡眠習慣の問題に加え、睡眠障害や身体の病気、うつ病などが関わる場合があります。疲労感だけで原因を判断することはできません。[出典8]
この記事では、成人を対象に、睡眠の確認点、生活習慣の改善策、受診の目安を整理します。
結論:寝ても疲れが取れないときは、睡眠不足や生活習慣だけでなく、睡眠障害、抑うつ、貧血や甲状腺疾患などの身体疾患も考えられます。
症状が数週間続く場合や日常生活に支障がある場合は、受診を検討してください。
寝ても疲れが取れないときは、睡眠時間と休養感を確認する
必要な睡眠時間には個人差がある
厚生労働省は、成人に対して「6時間以上」を目安に、必要な睡眠時間を確保することを勧めています。ただし、これは最低限の目安であり、6時間で全員が十分に休めるという意味ではありません。8時間以上を必要とする人もいます。[出典1]
長く寝床にいても、十分に眠れているとは限らない
寝床で過ごす時間と、実際に眠っている時間は異なります。
寝つくまで時間がかかる、夜中に何度も目が覚めるといった状態では、この差が大きくなります。
睡眠の確認では、時間に加え、目覚めたときに休まったと感じる「睡眠休養感」も目安になります。
[出典1]
年齢だけでは原因を判断できない
加齢に伴い、必要な睡眠時間や眠り方は変化します。
一方、生活習慣を見直しても眠りの問題が続く場合は、睡眠障害などの確認が必要です。[出典9]
寝ても疲れが取れない背景にある主な問題
睡眠不足や生活リズムの乱れ
睡眠時間の不足や、休日の夜更かし・朝寝坊は、見直したい習慣です。
就寝直前の食事、夜間のスマートフォン使用、寝酒なども、良い睡眠を妨げる要因になります。[出典2]
不眠症や睡眠時無呼吸
不眠症では、寝つきにくさ、夜中の覚醒、早朝の覚醒などに加え、日中の不調が問題になります。
[出典1]
睡眠時無呼吸では、大きないびき、睡眠中に呼吸が止まる、息をあえぐように吸うなどの症状がみられます。
日中の眠気や疲労感、起床時の頭痛が出ることもあります。
本人が睡眠中の症状に気づかず、家族などの指摘で分かる場合もあります。[出典3]
ストレスやうつ病
ストレスは疲労の原因の一つです。[出典8]
うつ病では、気分の落ち込みや興味・楽しみの低下に加え、疲れやすさ、集中困難、不眠、過眠などがみられます。こ
れらの症状が続く場合は、医療機関への相談が必要です。疲労感だけでうつ病と判断することはできません。[出典4]
貧血、甲状腺の病気、糖尿病など
睡眠以外の病気でも疲労感が生じます。以下は、各疾患でみられる症状の例です。
- 鉄欠乏性貧血:息切れ、顔色の悪さ、めまい(出典5)
- 甲状腺機能低下症:寒がり、便秘、体重増加、集中しにくさ(出典6)
- 糖尿病:のどの渇き、尿の回数の増加、意図しない体重減少(出典7)
これらの症状は、他の病気でも起こります。
また、糖尿病などでは、症状がほとんどない場合もあります。症状の有無だけでは、病気の診断や否定はできません。[出典6~8]
疲労の評価では、服用中の薬や治療の影響も確認の対象になります。[出典8]
睡眠と生活習慣で見直したいこと
起床時刻、朝の光、食事の時間を整える
起床時刻をなるべく一定にし、朝は光を浴びます。
朝食をとり、就寝直前の夕食や夜食を控えることも、睡眠習慣の改善に含まれます。[出典1~2]
寝室は暗く静かにし、暑さと寒さを調整する
就寝前の強い光や、寝室の騒音は睡眠を妨げます。
夜間のスマートフォンやパソコンの使用を控え、寝室は暗く、静かで、心地よい温度に整えることが勧められています。[出典2]
入浴は就寝の1〜2時間前を目安にする
就寝の1〜2時間前の入浴は、寝つきを良くする方法の一つです。
入浴によって温まった身体から熱が放散され、深部体温が下がる過程が入眠に関わります。[出典10]
カフェインと寝酒を見直す
カフェインは覚醒を促す一方、睡眠を妨げます。コーヒーだけでなく、お茶やエナジードリンクなどにも含まれます。
眠りに問題がある場合は、夕方以降の摂取を控えることが勧められています。
飲酒後は寝つきが良く感じられても、眠りが浅くなり、翌日に疲労が残ることがあります。
眠るための飲酒は、睡眠改善の方法にはなりません。[出典11]
日中に身体を動かし、就寝前は緊張を和らげる
継続的な運動は、寝つきや睡眠の改善に役立ちます。
運動習慣がない場合は、短時間の歩行などから始める方法があります。
ただし、就寝直前の運動は覚醒を高めるため避けます。[出典10]
就寝前には、読書や音楽など、落ち着いて過ごす時間を設ける方法もあります。[出典11]
活動後に強く悪化する疲労は、運動不足と決めつけない
軽い運動や活動のあとに疲労が強く悪化する場合は、単なる運動不足と決めつけないことが大切です。
このような状態は「労作後倦怠感」と呼ばれます。
筋痛性脳脊髄炎/慢性疲労症候群(ME/CFS)などでみられ、活動から12〜48時間後に悪化することがあります。
ME/CFSでは、無理な活動が症状を悪化させます。
活動後に強い不調を繰り返す場合は、運動量を増やす前に医師へ相談し、活動と休息の調整について確認する必要があります。[出典12]
受診を考える目安
次のような場合は、医療機関への相談の目安になります。[出典8]
- 原因の分からない疲れが数週間続いている
- 疲れで仕事や家事などに支障が出ている
- 疲れに加えて、体重減少や気分の変化がある
- 睡眠中のあえぎや、息が詰まるような様子を指摘されている
日常生活に支障がある場合、数週間たつまで待つ必要はありません。
生活習慣の改善だけで対処を続けず、症状を相談することが勧められます。[出典8~9]
強い眠気があるときは運転を避ける
未治療の睡眠時無呼吸では、日中の眠気が運転時の注意力や判断に影響します。
強い眠気がある状態での運転は避け、医師に相談する必要があります。[出典13]
受診時は、睡眠と症状の記録を伝える
原因が分からない疲れは、かかりつけ医に相談できます。
診察では、症状に応じて血液検査や専門診療への紹介などが検討されます。[出典8]
睡眠の記録は、眠った時間や睡眠の状態、日中の眠気を伝えるために役立ちます
。いびきや無呼吸の指摘、服用中の薬も確認の対象です。
睡眠時無呼吸が疑われる場合には、睡眠検査が行われます。[出典14]
気分の落ち込みや楽しめない状態が続く場合は、かかりつけ医や精神科などに相談できます。[出典4]
セルフチェック
以下は、症状や習慣を整理するための確認項目です。
病気を判定する検査や、点数による診断基準ではありません。
- 実際に眠っている時間が不足していないか
- 起床時に休まった感じがあるか
- 日中の眠気が生活を妨げていないか
- 大きないびきや呼吸の停止を指摘されていないか
- 就寝直前までスマートフォンなどを使っていないか
- 夕方以降のカフェイン摂取や寝酒が習慣になっていないか
- 疲労以外の症状や、活動後の悪化がないか
(出典2~3、8、12)
よくある質問
8時間寝ても疲れが取れないのは、病気ですか。
8時間という長さだけでは判断できません。睡眠の状態、日中への影響、他の症状を確認する必要があります。疲れの原因が分からず続く場合は、医療機関への相談が勧められます。[出典1、8]
いびきがあれば、睡眠時無呼吸ですか。
いびきだけでは診断できません。呼吸の停止やあえぎ、日中の強い眠気などを医師に伝え、必要に応じて睡眠検査を受けます。[出典3、14]
休日に長く寝れば、平日の睡眠不足を解消できますか。
休日の睡眠だけで、慢性的な睡眠不足を完全に取り戻すことはできません。平日の睡眠時間の確保と、生活リズムの見直しが必要です。[出典9]
疲れがあるときは、鉄のサプリメントを飲めばよいですか。
疲労感だけでは鉄欠乏性貧血かどうかは分かりません。鉄欠乏性貧血には出血や鉄の吸収障害などの原因があり、検査と原因に応じた治療が必要です。鉄の補充は、診断と医師の指示に基づいて行います。[出典5]
参考文献
厚生労働省『健康づくりのための睡眠ガイド2023』。2024年2月策定、2024年9月18日一部修正。https://www.mhlw.go.jp/content/001305530.pdf
厚生労働省掲載『Good Sleepガイド(ぐっすりガイド)成人版』。厚生労働科学研究班作成。https://www.mhlw.go.jp/content/001288005.pdf
米国国立心肺血液研究所『睡眠時無呼吸の症状』。2025年1月9日更新。https://www.nhlbi.nih.gov/health/sleep-apnea/symptoms
米国国立精神衛生研究所『うつ病』。
https://www.nimh.nih.gov/health/publications/depression
米国国立心肺血液研究所『鉄欠乏性貧血』。
https://www.nhlbi.nih.gov/health/anemia/iron-deficiency-anemia
英国国民保健サービス『甲状腺機能低下症』。
https://www.nhs.uk/conditions/underactive-thyroid-hypothyroidism/
米国疾病対策センター『糖尿病の症状』。2024年5月15日付。
https://www.cdc.gov/diabetes/signs-symptoms/index.html
英国国民保健サービス『疲れ・疲労感』。
https://www.nhs.uk/symptoms/tiredness-and-fatigue/
厚生労働省『寝ても疲れが取れないなら要チェック!あなたの睡眠の質 大丈夫ですか?』。https://kennet.mhlw.go.jp/slp/event/sleep_quality/index.html
厚生労働省「e-ヘルスネット」『快眠と生活習慣』。2025年6月1日更新。https://kennet.mhlw.go.jp/information/information/heart/k-01-004.html
英国国民保健サービス『疲労に対処するためのセルフケア』。
https://www.nhs.uk/live-well/sleep-and-tiredness/self-help-tips-to-fight-fatigue/
米国疾病対策センター『ME/CFSの症状悪化を防ぐための対策』。
https://www.cdc.gov/me-cfs/hcp/clinical-care/treating-the-most-disruptive-symptoms-first-and-preventing-worsening-of-symptoms.html
米国国立心肺血液研究所『睡眠時無呼吸と日常生活』。
https://www.nhlbi.nih.gov/health/sleep-apnea/living-with
米国国立心肺血液研究所『睡眠時無呼吸の診断』。
https://www.nhlbi.nih.gov/health/sleep-apnea/diagnosis
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