声かけの例と介護の負担を減らす方法
「同じことを何度も聞かれる」「物を盗ったと疑われる」——認知症の家族とのやり取りに、戸惑いや疲れを感じることがあります。
認知症の症状や必要な支援は人によって異なります。
接し方だけでなく、体調・薬・生活環境も言動に影響するため、対応がうまくいかない原因を家族の接し方だけに求めることはできません。[出典1]
この記事では、①日常の声かけ ②場面別の対応 ③家族の休息を支える制度を紹介します。
家族が実践できる接し方 7つ
1. 本人の気持ちを聞く
「何に困っていますか」と本人の言葉から始める。家族が先に結論を決めない。[出典2]
2. 一度に一つ、具体的に伝える
「あれ」「それ」ではなく物や動作の名前を使う。例:「靴を履いてください」+動作を示す。[出典3]
3. 返事や動作を待つ
理解や言葉探しに時間がかかることがある。急かさず、進められる部分を見守る。[出典3・4]
4. 伝わる声と表情で話す
穏やかな声・表情で、本人の顔を見て話す。感情は比較的長く保たれるとされる(個人差あり)。
[出典3・4]
5. 忘れたことや失敗を責めない
「また忘れたの」等は負担になる。必要な情報をその都度伝え、困りごとを手伝う。[出典3・4]
6. できることと本人の希望を尊重する
すべてを代わりにやらず、本人ができる部分を確認し、難しい部分を補う。[出典2・4]
7. 慣れた話題や習慣を取り入れる
記憶の正確さを確かめるより、本人が話したい内容を聞く。[出典3・4]
会話で避けたい対応と声かけの例
短く具体的に伝え、失敗を責めない関わり方が基本です。
すべての人に同じ言葉が適するわけではありません。[出典3・4]
| 場面 | ✕ 避けたい対応 | ◯ 声かけの例 |
|---|---|---|
| 同じ質問をされた | 「何回言えばわかるの」 | 「今日は木曜日です」と事実を短く伝える |
| 支度に時間がかかる | 「早くして」と繰り返す | 「上着を着てください」と動作を一つ伝える |
| 失敗した | 「もう何もしないで」と役割を取り上げる | 「ここを手伝ってもいいですか」と確認する |
| 言葉が出てこない | 返事を急がせる | 話し始めるのを待つ |
場面別の関わり方
🔁 同じ質問を繰り返すとき
- 直前の会話を覚えにくいことに加え、不安や体調不良、予定を確認したい気持ちなどが関係する場合がある。その都度短く答える。
- カレンダーやメモを一緒に確認する方法もあるが、メモを理解できるかは本人による。
置くだけで解決すると考えない。[出典2・5]
🔍「物を盗られた」と言うとき
- 置き場所を忘れ、盗まれたと確信することがある。
- 対応例:「見つからなくて困っているんですね。一緒に探します」
- 気持ちを受け止めるために盗難に同意する必要はない。実際の紛失状況も確認する。
- つらいときは他の家族に交代/訴えが強く続く場合は主治医やもの忘れ外来へ相談。[出典5]
🏠 自宅にいるのに「帰りたい」と言うとき
- 「帰りたい」が何を意味するかは人によって異なり、以前の住まい、安心できる場所、会いたい人などを指している場合がある。[出典6]
- どこへ帰りたいか、何が気になるかを聞く。施設では職員にも状況を共有。
- 外出しようとする場合は安全確保が必要。落ち着きやすくする工夫として、暗くなる前に照明をつける方法がある(効果には個人差がある)。[出典5]
🛁 入浴などの介助を嫌がるとき
- 無理に進めず、訴えを聞く。落ち着いてから改めて声をかける。
- 拒否が続き生活に支障が出る場合は、家族だけで抱えず介護職・医療職に相談。[出典5]
⚠️ 急に様子が変わったときは医療機関へ
数時間〜数日のうちに、会話がかみ合わない/強く興奮する/逆にぼんやりすることが増えた場合、認知症の進行だけでは説明できないことがあります。
意識や注意力が急に乱れる「せん妄」には、感染症・脱水・痛み・便秘・薬の影響などが関係し、
原因の確認と治療が必要です。[出典7]
→ かかりつけ医へ速やかに相談。
変化が始まった時期、発熱や食事・水分摂取の状況、薬の変更を伝える。[出典1・7]
次のような症状があれば、通常の受診を待たず救急要請を検討する: 意識が戻らない/呼びかけへの反応が著しく悪い、片側の手足が動かない、ろれつが回らない、けいれん、呼吸困難、高熱
家族の負担を減らすためにできること
対応を一人に集中させない
- 説明の繰り返しが負担なときは、別の家族と交代する。
- 対応が難しい場合は主治医や介護担当者と相談。常に穏やかに対応できることを条件にしない。[出典3・5]
休息を目的にサービスを使う(レスパイト)
- ショートステイ:本人が短期間施設に泊まり、食事・入浴等の支援を受ける。
家族の身体的・精神的負担軽減が目的でも利用可。ケアマネジャーに相談できる。[出典8]
相談先と介護保険の手続き
相談窓口:地域包括支援センター(無料)
高齢者の健康・介護・生活上の悩みを相談できる公的窓口。
申請方法が分からない場合や介護負担が大きい場合にも利用可。
担当センターは市区町村のHPや窓口で確認できる。[出典9]
在宅サービス利用までの流れ
- 市区町村の窓口で要介護・要支援認定を申請
- 認定調査と主治医意見書に基づく審査・判定
- 認定結果の通知
- ケアマネジャー等とケアプランを作成
- 事業者と契約し、サービスを利用
- 要介護1〜5 → 居宅介護支援事業所のケアマネジャー等に相談
- 要支援1・2 → 地域包括支援センター等が相談先
自己負担:原則1割。65歳以上で一定以上の所得がある人は2割または3割。
40〜64歳の第2号被保険者は所得にかかわらず原則1割。ショートステイは食費・滞在費が別途必要。[出典8・9]
参考文献
[出典1] 国立長寿医療研究センター「よくある質問・Q&A」 https://www.ncgg.go.jp/dementia/about/answer.html
[出典2] 厚生労働省「認知症の人と接するときの心がまえ」 https://www.mhlw.go.jp/topics/kaigo/dementia/a04.html
[出典3] 国立長寿医療研究センター「認知症の方と関わるとき~大切な7つのポイント~」 https://www.ncgg.go.jp/hospital/navi/55.html
[出典4] 国立長寿医療研究センター『認知症はじめの一歩』 https://www.ncgg.go.jp/hospital/monowasure/family/documents/hajimenoippotext.pdf
[出典5] 国立長寿医療研究センター「よくある質問・Q&A(対応に困る言動との向き合い方)」 https://www.ncgg.go.jp/dementia/with/face.html
[出典6] 認知症の人と家族の会「グループホームに入所の義母『帰りたい』と...」 https://www.alzheimer.or.jp/?p=2930
[出典7] 東北医科薬科大学病院 腫瘍内科「大切な人が『いつもと違う』とき―せん妄に戸惑うご家族へ―」 https://tmpu-oncology.jp/column/10.html
[出典8] 厚生労働省 介護サービス情報公表システム「短期入所生活介護(ショートステイ)」 https://www.kaigokensaku.mhlw.go.jp/publish/group12.html
[出典9] 厚生労働省「介護サービスの利用のしかた/地域包括支援センターとは」 https://www.mhlw.go.jp/content/11909000/08.pdf
免責事項
本記事は、認知症の人との関わり方や介護に関する一般的な情報を提供するもので、医師による診断や治療、個別の助言に代わるものではありません。
症状や適切な対応は、本人の状態や生活環境によって異なります。
対応に迷う場合や急な体調・言動の変化がある場合は、医療機関へ相談してください。
薬の変更や中止は自己判断で行わず、医師・薬剤師に確認してください。
介護サービスの利用条件や費用は、自治体や事業者、本人の状況によって異なります。
最新情報は、市区町村の窓口や地域包括支援センターなどで確認してください。
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